竹村りゑの物語の宅配便 vol.3
冒険をテーマにした本
『どろぼうの神様』コルネーリア・フンケ著、細井直子訳(WAVE出版)
【撮影協力】gelateriaRITORTA
夏といえば冒険、冒険といえば少年少女。これはもう文学界の鉄則と言ってもいいくらい、子どもが日常を離れて冒険を繰り広げる物語の舞台は真夏が多い気がします。そこで今回は「冒険」をテーマに、私が世界で1番好きな児童小説『どろぼうの神様』をご紹介しましょう。親を亡くした幼い兄弟プロスパーとボーは、意地悪な叔母夫婦に引き取られそうになったことから家出を決行し、運河とゴンドラの都ヴェネツィアまでやってきます。そこで出会ったのが「どろぼうの神様」を名乗る少年。街のお金持ちから高価な品々を盗み出し、孤児たちを養っているというどろぼうの神様と共に、プロスパーとボーは仲間の孤児たちと力を合わせ、冒険を繰り広げるというストーリーです。謎の依頼人や探偵など、わくわくするモチーフがふんだんに登場する一方で、根底に流れるのは、誰しもが覚えのあるはずの「子どもであることの不自由さ」大人になると忘れてしまいがちですが、子どもなりに、大人の理屈に振り回されて大変なこともあったはずです。夏休みに家でごろごろしているお子様たちも、気楽そうに見えて実は色々気苦労があったりして。この本をきっかけに、今まで聞けなかった子どもの本音を教えてもらえるかもしれません。