新卒から芸の道へ。「にし」の最年少芸妓 美音 幸ぎくさん | Favo石川版
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金沢市 野町

14 美音

芸妓そのものがこの町の文化である自覚

芸妓と野球は似てる?知られざる個性豊かな芸の世界

 野町の観光地として知られるにし茶屋街は、金沢三茶屋街の中で最も多くの芸妓とお茶屋が集います。江戸の頃から花街として続く歴史を今に伝える芸妓。実は芸妓は個人事業主としてお茶屋に所属し、検番がそれを統括するという仕組みで運営されています。一見複雑に見える世界ですが、内実は家族のように助け合い成り立っているとのこと。今年は初の試みとして、芸妓オーディションを開催したことでも話題となりました。
 そんな世界で出会った一人の芸妓から、名刺代わりに自作の千社札を渡されました。にし茶屋街最年少の芸妓「『美音』の幸ぎくです」という言葉と共に手渡された札には、野球ボールと虎のイラストが描かれ、阪神タイガースを表しているのが分かります。京都出身で、親子三代にわたる根っからのタイガースファン。芸妓というとお客様との会話も大切な仕事のひとつですが、幸ぎくさんの会話の武器は、やはり野球談議です。元々口数の少ないタイプだった幸ぎくさんにとって、近年では語学や野球も会話の糸口になることが多いと言います。さらに憧れを語る相手は、一年目の新人監督としてチームを優勝へ導いた藤川球児監督。「現役の頃も今も、自分の役割をきちんと果たし、結果につなげる姿に共感します。芸妓もまたチームで行うお仕事ですから、私もその一員として役割を全うできる人でありたい」と話します。その言葉の奥には、舞台裏で日々積み重ねてきた努力が伝わってきました。

お座敷の際は芸妓特有の形に結われた「芸妓島田」のかつらに白塗り、鮮やかな着物の衣紋を大きく抜いて着用するのが芸妓ならではの装い

育まれた日本文化への関心 芸と美の狭間で生きる覚悟へ

 母は扇子の意匠を生業にし、祖母は西陣織の染職人。京都で育った幸ぎくさんは、幼い頃から家族に連れられて歌舞伎や舞踊の舞台を観に行くなど、日本の伝統芸能と近い環境で育ちました。絵を描くことを好み、芸術の研究ができる金沢美大に進学。就職活動で「日本文化に携わる仕事がしたい」と思っていた矢先、にし茶屋街の芸妓募集を目にします。そして、芸の世界へ足を踏み入れました。
 「芸妓という存在自体が芸術文化と密接」と幸ぎくさん。華やかなように見えて、歩き方ひとつ所作ひとつ、厳しく躾けられ、どれほど稽古を重ねても「一生一人前にならない」と言われる特殊な環境です。だからこそ「続けること」に価値があるのだと話します。支度を手伝う姐さん芸妓に幸ぎくさんのことを聞くと「本当に不器用な子ですよ」とピシャリ。しかしその言葉には大きな愛があり、本人もそれをしかと受け止めている様子です。完成形のない伝統文化を守り続けていくこと。にし茶屋街の中で、幸ぎくさんはその覚悟を胸に今日も芸と人間性を磨いています。

母がデザインした扇子や友人が描いた扇子を愛用。大きいものは踊り用で、今はなき『西泉家』にあったものを母に復元してもらったという

美大出身の幸ぎくさんが、自身でデザイン・制作をしたオリジナル千社札

金沢市 野町

美音

店舗情報
店名
美音
住所
金沢市野町2-24-2
電話番号
076-241-2201
営業時間
紹介制
  (お座敷体験は観光協会に要問合せ)
Instagram
@kanazawa_nishi_mine

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