20 Pause kanazawa
音楽やアートが好きな人が老若男女集う町に

〝ごちゃまぜ〟が生む人とカルチャーのハブ
昨年1月、古くから音楽や食の文化が息づく柿木畠に、一軒のリノベーションハウスが生まれました。いくつもの店が同居する『Pause kanazawa』には、フォー専門店やビンテージショップ、スケートボード関連のストアなどが共存。道路に面したガレージには、ぬいぐるみ作家のショップとレコード店が並び、道行く人の視線をさらいます。そしてその空間のあちこちを、ストリートアートのギャラリーとして手掛けているのが、この場所の代表でもある下出直人さんです。
加賀市出身の下出さんが金沢へ移り住んだのは、通っていた柿木畠の古着店『HONEY』で働き始めたことがきっかけ。独立を経て再びこの町に戻ってきた今、「この場所をコミュニティの交差点にしたい」と話します。
初めて自身の店を構えたのは、金沢屈指のディープスポット〝新天地〟。このエリアでは、店主がお客さんを別の店へ連れ、共に夜をはしごする〝ごちゃまぜ〟な文化が根付いていました。その空気を肌で感じてきた下出さん。今も、1階で飲食に訪れた人に2階やガレージを案内したり、近所の店を紹介したりと、積極的に声をかけるといいます。また、複数の店が仕切りなく混じり合ったレイアウトにも、下出さんに宿る〝ごちゃまぜ〟文化の影響があるのかもしれません。複雑な動線は功を奏し、訪れる人が興味をそそる空間に仕上がっているようです。

『Pause kanazawa』を共につくる、マルチな才能の仲間たち。この場を起点としてそのエネルギーが街に広がりを見せています。
あらゆる境界を越えて町の温度をつくる
思い付いたら止まらない性格だと笑う下出さん。「次々アイデアが浮かんでしまう。でも、その分まわりに迷惑をかけてきました」と話します。だからこそ「自分の財産は人に恵まれていること」だとも。『Pause kanazawa』の運営も仲間の支えがあって成り立っていると感謝を口にします。
下出さんが最初に新天地で手掛けた店『gallery&barパペロ』は、ストリートアートと音楽を楽しめるBARでした。現在は音楽に特化した『music bar donuts』へと姿を変え、音楽以外の表現の場として『Pause kanazawa』が誕生。しかし、柿木畠には昔からジャズバーやライブハウスなど音楽を楽しめる店が多く、近年は若い世代の音楽スポットも増えているとか。「ストリートアートと音楽は親和性が高い。ここから〝音楽の街・柿木畠〟という文化が広がったら面白いのでは」。
昼はランチや買い物を楽しむ人が行き交い、日が落ちてくるとお酒と共にアートや音楽を求める人が訪れる『Pause Kanazawa』。ストリートの文化が色濃く一見メジャーから外れた性質を有しながらも、下出さんはアンダーグラウンドとオーバーグラウンドの狭間を軽やかに行き来しています。柿木畠の新たな交差点の真ん中には、そんな絶妙なバランスを持った人が立っていました。

典型的なホワイトキューブや町家ギャラリーのイメージに反した内観。フードや音楽が入り混じる欧米のオルタナティブスペースを意識。

築90年の古民家を改装。当初は小さな扉の隠れたスポットだったが、後にガレージを改装し開けた場所に。市役所職員が昼休憩にレコードをチェックしにくるような一幕も。
Pause kanazawa
店舗情報
- 店名
- Pause kanazawa
- 住所
- 金沢市柿木畠4-6
- 営業時間
- 日~水11:00~17:00、
金・土11:00-22:00(ギャラリー)
※閉店時間は各店異なる
- 定休日
- なし
- @pause_kanazawa