15 加賀水引 津田水引折型
観光地とローカルのちょうど狭間にある町

結果的として役に立った、10年間のサラリーマン経験
数千以上ある色とりどりの紐を自在に操り、立体的で造形的な紐細工を生み出す加賀水引。100年以上の歴史を持つ『津田水引折型』の5代目として生まれ、現在代表を務める津田六佑さんは、昔からの定番である結納や祝儀袋にとどまらず、水引の表現をアクセサリーやインテリアなど多様に広げてきました。
子どもの頃から手先が器用で学校の授業で一つのテーマをもとに工作する際にも、飛び抜けて上手なものや目立つものが完成していたという津田さん。金沢工業大学を卒業後、県内のウェブ制作やデザイン•コーディング、ネットショップなどの仕事に10年間従事。当時のスキルを活かして、現在ウェブサイトや通販サイトの運営•パッケージデザインなどはほとんど自前で行なっています。

「贈り主の気持ちを伝える」という本質は残しつつ、現代において不要な機能を削ぎ落としてゼロベースで再開発したお札を贈るラッピング「wrap」。

店内にはさまざまな水引細工の作品が並びます。
問題提起をするようなブランドを次々と展開
水引のアクセサリーブランド「knot(ノット)」や、お礼を贈るラッピング「wrap(ラップ)」、黒一色を使って表現する「#000 BLACK KOGEI(ブラックコウゲイ)」など、誰かに心(気持ち)を伝えるという水引の本質や、伝統工芸の捉えられ方に対して一石を投じるような企画を次々と展開。伝統工芸に対する考えを問うと、「伝統工芸とは誰かが名付けたもの。その言葉があるがゆえに『守らなければいけない存在』のようになっていますが、実際は地域の商店と何も変わらないと思うんです」という答えが返ってきました。
「伝統工芸であろうとそうでなかろうと、良いものは売れるし悪いものは売れない」。消費者から選ばれる商品を作るために、市場の売れ筋調査などは欠かさず、スピードを重視。AIも活用しながら、リサーチから新商品製作、撮影、オンラインショップへの掲載までをたった1日のうちに行うというから驚きです。

制作において「美しさは絶対。あとはお客さまを喜ばせたり感動させたりするようなものを目指しています」と津田さん。
競争を避けて隙間を見つけ未来へ加賀水引を残す
保守的なイメージが強い伝統工芸において、柔軟な発想で新しい水引の在り方を切り拓いている津田さん。一方で、中長期的な計画を立てたり、戦略を考えたりすることはほとんどないのだとか。「実は受験も一度もしたことがなくて、隙間を縫うように、競争を避けて生きてきました。競争は疲れるし(笑)、競争しなくても勝てるところを見つけるのが得意なのかもしれません」。
プライベートでは3人の子どもの父。「もしも子どもたちのうち誰かが継ぎたいと言ったときに、仕事として食っていけるだけのものにしておきたいですね」と笑顔で語ります。
加賀水引 津田水引折型
店舗情報
- 店名
- 加賀水引 津田水引折型
- 住所
- 金沢市野町1-1-36
- 電話番号
- 076-214-6363
- 営業時間
- 10:00〜18:00、土曜は10:00〜12:00
- 定休日
- 日曜、祭日
- WEB SITE
- https://kagamizuhiki.com