07 Chomsky Coffee & Library
世の中のスピードから離れ、日常に句点を打てる場所

消費や生産性といったものからつかの間、解放される空間
これまでの経歴から、絶えず人生を模索してきたように見える、オーナーの林玄太さん。「昔から目的で埋め尽くされた時間、生き方というものが気になっていたんです。一般的な正解というものから逸れて自分なりの最適解を探したい。自分にとって気持ちがいい状態であり続けるためには、現状を見直し、耕し続けることが大切だと思っています」と話します。
『Chomsky Coffee & Library』は、そんな林さんの生き方を体現し、世間に対するスタンスを表明する場所でもあります。無意識のうちに生産活動や消費活動に組み込まれてしまう日々において、珈琲店とは無目的でいられる場所。社会から離れて肩の荷を下し、いつもとは違う時間の流れを感じる。「日常に句点を打てるのがコーヒーやと思うんです」。営業日は週4日、午後1時から5時までの4時間。天井まである本棚には、漫画や雑誌、絵本、小説、専門書にエッセイ本などあらゆるジャンルの本が揃っています。丁寧に淹れられたコーヒーを味わいながら本を読んで没頭するも良し、流れる音楽に耳を傾けて過ごすも、カウンターで居合わせた他のお客さんやマスターの林玄太さんとの会話を楽しむも良し。そこは慌ただしい日常から一度離れて自分の時間を取り戻すことのできる、心のセーフティスペースのような空間です。

本への偏愛ぶりが伝わってくる選書。「本をぜんぜん読まない人でも、一冊くらい刺さるのがあると思う」と林さん。コーヒーはトップグレードの生豆を丁寧に焙煎、ハンドドリップでゆっくりと抽出します。価格は一杯480円(ブレンド)〜
子どもと歩いて気付いた、本来的な人間のペース
プライベートでは4児の父。「子どもって歩くのもゆっくりやし、すぐに立ち止まる。視線を合わせてみると、ガードレールが大きく見えたり小さなお花がよく見えたりこういう目線で世界が見えているんやなと気付いたんですよね」と林さん。世界規模でのパンデミックという非日常の中で、一度は見直された日常の大切さ。しかしながら、世界はAIの進化や情報の氾濫によりこれまで以上に加速しています。「今の世の中の速さは、人間がついていくには疲れるスピードやと思うんです。自分はここで『人間の時間』を取り戻せるような場所を作りたい」と熱を込めます。
大阪から金沢に移住して気付いたのは、地元の人は少しの距離で車に乗るということ。一方で、石引は新旧さまざまな店が立ち並ぶ商店街が残り、人々が歩いて移動する「徒歩の街」。人間らしいペースを取り戻せる場所だと言います。
コーヒーの魅力は「同じ産地の同じ豆を数値上同じように焙煎しても、すごく微小な条件によって仕上がりが異なります。そこに技術介入の余地があるし、簡単に説明することのできない『わからなさ』こそが面白い」と語ります。物事の複雑さと向き合い、咀嚼し、自分なりの結論を見出す。そんな林さんが生み出すコーヒーは一言で表すことのできない、物語のような広がりと奥深さがあります。
Chomsky Coffee & Library

店舗情報
- 店名
- Chomsky Coffee & Library
- 住所
- 金沢市石引2-19-12
- 営業時間
- 13:00~17:00
- 定休日
- 月・木・日曜・祝祭日
- @chomsky_coffee_library