11 こつこつおやつ 凪
自然と生活がそばにある風景は、昔も今もそのままに

ボロボロの小さな民家こそ「愛おしい」の宝庫
6年前の春、大野に新たな「目指して行く場所」ができたと話題になりました。『こつこつおやつ 凪』。その独特の店名や佇まい、提供されるお菓子など、様々な面で虜になった人は多く、時を経た今も、平日休日問わず満席になるほどの人気ぶりです。
以前は東京で看護師をしていた店主の岡田静香さん。移住を機にカフェの経営を考え、大野で古い物件を巡りました。大野は北前船で栄えた町。立派な町家も多く残っていますが、岡田さんが惹かれたのは、こぢんまりとした少し朽ち始めたような民家。以前住んでいた高齢の男性から家の話を聞き、「外壁の錆止めをご自身で塗り直したところで疲れてしまって、途中で辞めてしまわれたとか。この建物が歩んできた歴史や物語があちこちにあり、それがとても愛おしくて」と岡田さん。店舗としての改装は行いましたが、残せるものはなるべく変えないように。外壁もそのまま利用しています。
毎年8月は、ひと月店舗を休んでの充電期間。山登りや秘湯めぐりなど、自然と対峙することを好み、日本各地へ出向くとか。「地球から湧き出る恵みを残し続けるためには、大変な労力やお金や責任が伴います。それを大事に守ってくださる場所に行くと力をもらえるんです」。脈々と続いてきたものを愛し、活かす。趣味にも店づくりにも、一貫した想いを感じます。

店舗で実際に使用している作家ものの器も販売
店主の手で生み出される作り続けたいお菓子
フルーツ大国である長野の知人を通じて、農園から直送される旬の果物。季節のお菓子を作り始めるときにはまず、その果物を存分に活かすための組み立てを考えると言います。「このフルーツには、ショートケーキか、タルトか、甘みや酸味のバランス、口に入れた時のくちどけも大切にしています」と岡田さん。そうして出来上がったケーキに華美なトッピングはありません。口に含むとクリームやスポンジが一体となり、果物の良さを最大限に引き上げる、瑞々しいフルーツが主役のケーキです。
開店当時、お菓子のメニューは3種類のみ。ラインナップを増やすため、日夜練習を重ねても、目標の味わいに仕上がらないことも多かったと言います。徐々にレパートリーが増え、それを求めて遠来客も訪れるようになった今、岡田さんはこう語ります。「『凪』はご褒美のお菓子を作るパティスリーではないので、作るのはあくまでも〝日々のおやつ〟。子どもも素直に楽しめて、大人にも喜んでもらえるようなものを、変わらずに提供し続けていきたいです」。変えないこと。続けること。真っ直ぐな岡田さんが作り出すお菓子は、いつも凛とした立ち姿をしています。

絶妙なバランス感覚で構成された季節のショートケーキ(600円/この日はメロン)

数歩も歩けば海というロケーション。海風に長年さらされた外壁はあえてそのままに
こつこつおやつ 凪

店舗情報
- 店名
- こつこつおやつ 凪
- 住所
- 金沢市大野町7-108-4
- 電話番号
- 076-255-2327
- 営業時間
- 11:00~17:00(L.O.16:30)
- 定休日
- 日曜~火曜 ※8月は1カ月間休業
- @nagi.kotsukotsu_