現代の発想で、茶道の間口をこじ開ける TEA BASE白澤 亭主 髙橋勇太さん | Favo石川版
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金沢市 野町

16 TEA BASE白澤

市街地でありながら、観光地ど真ん中ではない金沢。

道具と場が整うと自ずと人も整っていくもの

「金沢はもはや狂ってる」。のっけからそう話すのは、茶道家の髙橋勇太さんです。にし茶屋街の路地裏にある、築百年の町家。『TEA BASE白澤』と名付けられたその建物を活動拠点にする髙橋さんは、茶道の伝統文化とは縁遠い家庭に育ちました。大学時代の海外旅行で「自分は日本を知らない」と痛感し、帰国後に叩いた茶道の門。アパレル業界で働く傍ら、毎日茶を点てる生活をSNSで発信し続けています。特に「#インスタ茶道部」というハッシュタグを使い交流の輪を広げてきました。「シフト制のサービス業で土日も働くような自分が、茶道という一見崇高に見えるものを発信することに意味があると思ったんです」。
 元々茶道の〝外の人〟だったからこそ、感じることも。この地で活動する茶人として「金沢は恵まれすぎている」と話します。伝統芸能から現代アートまでが混在し、質の高い古典芸能も安価に鑑賞できること。幼少期から文化教育が根付き、道具を求めれば一流作家の作品が街中で手に入ること。公的支援も厚く、知識と経験を積む土壌が整っていること。「日本でこんなに文化芸術に猛進する町はありませんよ。ここまでくると狂ってると言っても大げさじゃない」と笑いながらも、その特殊性にどこか誇らしげです。

武家文化の影響を色濃く残す遠州流を学ぶ。お点前の所作は武士のように凛々しい。実はお点前には約200の種類があり、道具や流派、季節、場面によって変化させるそう

もっとソーシャルに、もっと自由に楽しむ茶の湯文化

 SNSをきっかけにイベント出店や茶道体験など、アパレルとのダブルワークで活動を広げてきた髙橋さん。今後は自身の拠点を中心に茶の湯に専念していくといいます。2021年冬、茶道の開かれた場としてオープンした『TEA BASE白澤』。武家茶道を学ぶ髙橋さんにとって、広さや間取りにこだわりがあり、やっと見つけたのがこの町家でした。周辺を歩くと喧噪さがなく、暮らしの中に溶け込む文化的側面を感じます。旧赤線地帯にも近い、アングラな一面にも興味をそそられ即決したそう。現在はビギナー向けの茶道体験や和の作法教室を、予約制で受け付けています。「茶道というのは、人をお迎えするための準備やもてなしであり、人間関係を円滑にするソーシャルなもの」。訪れる人には、普段からそう伝えているのだとか。
 髙橋さんの発信は、いつも日常の延長に茶の湯があることを軽やかに示していますが、精神性が高く歴史深いお茶の世界を広く新しい形で発信することで、時に強い指摘を受けることもあると言います。しかし、ほとんどの反応はポジティブなもの。発信を始めた当初は、特に多くの共感が寄せられたそうです。そうやって求められている事実こそが、現代における茶の湯の在り方を考えるヒントであり、髙橋さんが自分のすべきことに突き進んでいける原動力なのかもしれません。

武家の生活用品を取り入れた設え。文をしたためるための文台を使用した珍しい設えは遠州流ならではで、SNSでも好評を博した

珠洲焼作家・山田睦美さんの茶碗。茶箱を携えてシベリア鉄道で旅をした時には、この茶碗で数多くの海外の方にお茶を振舞ったそう

金沢市 野町

TEA BASE白澤

店舗情報
店名
TEA BASE白澤
住所
金沢市野町2-3-28
営業時間
完全予約制(SNSにて要問合せ)
Instagram
@tea.base_hakutaku

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