10 手づくりパンの店 ヒコサ
昔からの顔馴染みが多い、安心で落ち着く場所です

昔ながらの味わいと親しみのある接客が魅力
入り組んだ道を入ったところにある、築100年以上の趣のある建物。入り口に掲げられた「焼きたて手作りパンあります」と書かれた布製の看板が目を引きます。店内には達筆な字で書かれたパンのお品書きがずらり。この中から「カップシフォンケーキ」や「あんパン」などその日の4、5種類が並びます。添加物を使用せず、厳選した素材で作ったパンはどれも素朴で優しい味わい。地元民だけでなく観光客も訪れる、知る人ぞ知るお店です。
店主の川村千志子さんは大野町出身。進学のため一度は故郷を離れたものの、約16年前にUターン。子育てが一段落したことから、2011年に生まれ育った店でパン店を始めました。店名は祖父の代から続く醤油蔵の屋号から取ったと言います。「お客様とのやりとりも楽しみの一つです。この店を営むことが、私の生き甲斐になっています」と川村さん。まるで実家に帰ってきたような気さくなコミュニケーションに、癒される人も少なくありません。

惣菜系やおやつ系、デニッシュ系など幅広いパンを手掛けています。
好奇心が旺盛で、学ぶことに貪欲 50代から大学で再び学ぶ
東京の大学を卒業する年に結婚。夫の転勤に付き添い、栃木、大分、埼玉と全国を転々としました。その間、2人の子どもを育てながら学校給食や弁当店で働き、調理師免許を取得。パン教室へ通ったこともあり、「子どもたちは手作りのパンを食べて育ちました」と振り返ります。
そんな川村さんですが、子育ての手が離れた50代の頃、「自分はこれから何をして生きていったら良いのだろう」と「空の巣症候群」になってしまいました。自分を見つめ直した時にたどり着いたのは、「大学で再び学びたい」という答えでした。50代に入ってから女子栄養大学栄養学部二部にて栄養学を学び、さらに日本女子大学でも栄養学や司書の講義を受けました。今ではフードスペシャリスト、公共図書館司書に学校図書館司書などさまざまな資格を有する「スーパーおばあちゃん」になりました。

吹き抜けが象徴的な立派な建物

看板やお品書きは、転勤族だった頃、水墨画のスクールで知り合った旧友の書家によるもの
人とのご縁を大切に、後悔しない生き方を歩む
思い出話の中では、大学教授や子どもの習い事の先生など各地で出会った人とのさまざまなエピソードが出てきて、人とのご縁を大切にしてきた様子が伝わってきました。数年前に足腰を痛めてからはかつてのように遠方へ行けなくなったそうですが、「今は狭い動線の中でしか動けないけれど、これが楽しいんです」と川村さん。人生を精一杯楽しむ姿勢に、学ぶことは多くあります。
手づくりパンの店 ヒコサ

店舗情報
- 店名
- 手づくりパンの店 ヒコサ
- 住所
- 金沢市大野町7-35-1
- 電話番号
- 076-267-0350
- 営業時間
- 11:00〜18:00
- 定休日
- 水曜・日曜
- WEB SITE
- https://hikosa.exblog.jp