08 グリルニュー狸
厨房も客席も親子三代が並ぶ町の老舗ならではの空気感

数々の名物で常連客を虜にする今はなき名店の流れをくむ洋食店
ヤキメシ、コキール、ハヤシライス、サーモンステーキ、タンシチュー…。名物というのは店に1・2品ほどが一般的ですが、昭和42年創業の老舗洋食店『グリルニュー狸』には、いわゆる名物と呼ばれているメニューが数多くあります。どの料理にもこの店の個性が凝縮されていて、お客様がそれぞれに「このメニューこそ店の看板だ」と思いたくなるのも納得。多くの人に愛されているからこそ、名物が自然と増えていくのかもしれません。
そんな魅力的な料理を、毎日厨房で作り続けているのが、矢田紀彦さん、佳弘さん、勇紀さんの親子三世代シェフ。初代・紀彦さんは、ひがし茶屋街の『レストラン自由軒』や、かつて片町にあった西洋料理店『グリル狸茶屋』で修業を積みました。「妻の作子も『グリル狸茶屋』で一緒に働いていました。その後、のれん分けをしていただきましたが、当時この店で働いていた同僚の多くも独立し、今では世間に知られる有名店になっている店も多くあるんです」。金沢の洋食文化を築いた偉大な系譜の存在を改めて感じます。

自家製のデミソースとケチャップを合わせたコクのある「ハヤシライス」(1,000円)
家族だからこそ作れる空気で少しでも心を和ませられたら
矢田さん一家とスタッフで店を回す同店。大阪で修業をし、6年前に戻ってきた勇紀さんは「自分たちにとっては当たり前の環境ですが、お客様は家族のアットホームな空気感も味わいにきてくださっていると今ならわかります」と話します。もちろん家族だからこそ大変なことも。「シェフ3人でも店をより良くしたいという考えがそれぞれあるので、正直親子喧嘩は多いです(笑)。特に父と息子の距離感は難しい。おじいちゃんと孫くらい年の離れた距離感が丁度良いのかもしれません。おそらく我が家に限った話ではなく、跡継ぎあるあるなんです」。
元々、もう少し石引寄りの場所で創業し、その後現在の場所に移転。学生街でありながら、商売人や医療関係者のお客様も多く、家業を継いだ親子三代での利用も少なくないそうです。「家族はそれぞれでも同じ立場ということで、そういった皆さんと一緒に町を作ってきたような感覚もあります。風景はどんどん変化していますが、うちの店くらいは変わらずに、お客様には安心して〝帰ってきた〟と思ってほしいです」と話す紀彦さんと佳弘さん。
若い感性が加わり変化の時を迎えながら、大切にするべきものを改めて感じ始めている同店。まるで、新たな施設が建ち、人の流れが変化し始めた小立野の町の動きとリンクしているかのようです。もしかすると、それこそが脈々と続いていくものの移りゆく姿なのかもしれません。

店内に飾ったたくさんのタヌキの置物はほとんどがお客様からの手土産だとか

創業者の紀彦さん、作子さんご夫妻。この笑顔が見たいと訪れる常連客も多い
グリルニュー狸

店舗情報
- 店名
- グリルニュー狸
- 住所
- 金沢市小立野3-27-12
- 電話番号
- 076-262-6658
- 営業時間
- 11:00~14:30、17:00~20:30
- 定休日
- 火曜、第3月曜
- @tanuki0329